ALFA ROMEO 155 V6 Ti

1993年、ドイツツーリングカーレース(DTM)で22戦14勝に輝いたチャンピオンマシン。
アレッサンドロ・ナニーニ(Alessandro NANNINI)が駆った155がここにある。

DTM(Deutsche Tourenwagen Misterschaft)は、ONS(ドイツナショナルモータースポーツ協会)が1984年に始めたツーリングカーレースシリーズ。FIAが主催していたETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)は、グループA規定で排気量によるクラス分けがおこなわれていたのに対し、DTMでは排気量は関係なく、すべてのマシンに総合優勝のチャンスを与えたことが特徴であった。また、ETCは耐久レースに近かったのに対し、DTMではスプリントレースを基本にすることで、大排気量のマシンと小排気量のマシンがまったく同じ土俵で優勝を争う刺激的なレースであったといえよう。

アウディ、メルセデス、BMWの白熱した戦いで、1イベントに10万人に近い観客を動員するほどに急成長したDTMであったが、1992年に陰りが見え始める。シーズン半ばで2年連続して王座を奪ってきたアウディが公認部品の解釈を巡って主催者と対立し、DTMから撤退を決めたのである。この年は辛うじてメルセデスvsBMWのタイトル争いによってシリーズは保たれたが、翌年にはBMWが新型M3の出場が認められないことを理由に撤退を表明。オペルも車両開発の遅れから参戦を延期した。結果、ワークス体制で出場できるのがメルセデスだけとなってしまい、シリーズが成立しなくなるという危機を迎えたのである。それを救ったのが、イタリアから参戦したアルファ・ロメオであった。
DTMはこの年から、FIAの新たなツーリングカー規定であるクラス1とクラス2の車両出場を認めていた。クラス1では、エンジンは2.5リットルの6気筒以下であれば量産品からの大幅な改造が認められており、事実上何でもありのレースであったといえる。リミッターの装着義務も当然なく、出力は400hp以上さえ可能であった。このクラス1規定の車両をいち早く開発していたアルファ・ロメオがドイツに乗り込んできたのだから、1993年のDTMはそれまでとはまったく趣きの異なる緊張感に包まれていた。

ワークスであるアルファ・コルセとドイツのシューベル・チームからエントリーしたこのアルファ・ロメオ155V6Tiは、メルセデス・ベンツ190EevoIIを相手に、序盤戦から凄まじい速さを見せつける。やがてメルセデスも改造度の高い190Eクラス1を投入するが、フルクラス1仕様のアルファには歯が立たず、11イベント22レースのシーズンでアルファ・ロメオが14勝、メルセデスが8勝という結果に終わった。

その時にA.ナニーニがドライブした155(#7)である。