ALFA ROMEO Giulietta Spider VELOCE

真の強さとラテンの血統が漂うマシン。
アルファ・ロメオは快活なイタリアンたちが生んだ地中海の疾風。

チャーミングで朗らかなイタリア娘、アルファ・ロメオ・ジウリエッタ。そのロマンチックな名前は、シェークスピアの”ロミオとジュリエット”からのネーミング。
なかでも、ジウリエッタ・スパイダー・ヴェローチェは、ピニン・ファリーナのデザインによる小柄なモノコック・ボディに、 ツインカム、ツインキャブ・エンジンを搭載した魅力的なマシンであった。

アルファ・ロメオが誇る無敵のレーシング・ストーリー。

世界の自動車王と呼ばれるヘンリー・フォードにとってさえ高性能マシンの象徴とした車、それがアルファロメオであった。
第2次大戦前はレーシングカー・メーカーとして世界のグランプリ・レースを席捲。また、ミッレ・ミリア11回、タルガ・フローリオでは8回の優勝、ル・マンでも4年連続優勝を飾るなどの活躍ぶりであった。戦後は量産車にレース技術をフィードバックし、1954年、ジウリエッタ・スプリント(クーペボディ)を発表。手頃な価格と、当時の水準を超える高性能をもって絶賛された。その後、ベルリーナ(セダン型)、スパイダー(オープン型)とバリエーションアップが図られ、1956年にはイタリア語で(速い)の意味を持つ、スパイダー・ヴェローチェをデビューさせた。
その速さは、当時のブリティッシュ・スポーツカーたちを凌駕しうるほどで、トライアンフが2000ccエンジンで最高速160km/hを記録できた頃、スパイダー・ヴェローチェはわずか1290ccで180km/hをマークしていたのである。この時、日本ではやっと100km/hの時代、クラウンが観音開きドアを採用していた頃である。

市販車としては当時少ないツインカム、ツインキャブエンジン。

現在、四国自動車博物館に展示されているジウリエッタ・スパイダー・ヴェローチェは1962年型。卓越した動力性能とコーナーリング性能を持つこのマシンの心臓部には、1290ccのオールアルミ製ツインカム直列4気筒エンジンが収められており、ツインチョークのウェーバー・キャブレターを2基装着し、90馬力を絞り出した。
そのうえ、ボディはモノコック、タイヤはラジアル、フロント・サスはコイルによるダブル・ウィッシュボーン、リア・サスも3組のトレーリング・リンクによるコイル吊りリジット・アクセルが採用されていた。大半の実用車がリア・サスには半楕円形リーフ(板バネ)を使用していた時代である。まさに驚くべき高性能マシンだ。
時代を先駆けたジウリエッタ・スパイダー・ヴェローチェ。輸入台数も少なく、国内にも数少ない。幾度かのマイナーチェンジが行われたが、この1台からは古き良き時代に響かせた、ツインカム・サウンドが聞こえてくる。
水冷直列4気筒DOHC