イタリアの感性とパッションを傾注した小型・軽量のセンシティブなマシン。
アバルト1000SPは60年代後半を疾走した。
アバルト1000SP
バルケッタ チュボラーレ。スポーツプロトタープのGr.4カーである。
バルケッタとはオープン、チュボラーレとはチューブラー(鋼管)フレームをさす。 圧縮比11.5:1の高回転型DOHCエンジン。パインフレームに個性的なグラスファイバー製のボディ。
前後ともに、インディペンデント・サスペンションと4輪ディスク・ブレーキを装備。
勝利の条件をすべて備え、時代の最先端を駆け抜けたマシン。それが、アバルト1000SPである。
アバルトのカタログにも登場した量産レーサー。
アバルト1000SPの特徴は、まず、そのエンジンにある。ティーボ229Aと呼ばれたパワーユニットは、アバルトのビアルベーロ用の1000ccの発展型。そのベースはフィアット600のものであった。
アバルトのカタログによると、2基のツイン・チョーク・ウェーバー40DCOEと高性能の圧縮比から、105馬力を絞り出すと明記されているが、このレーシング・バージョンは、プライベート用にもチューンアップされており、スペック以上のパワーを持つと推測される。
この水冷直列4気筒ツインカム・ユニットは、OTやシムカといった他のアバルト製リア・エンジン・レーシングスポーツのように、リアにオーバーハンギングされておらず、鋼管スペース・フレームのミッドシップに搭載されている。
また、ドライ・シングル・プレートが標準装備とされていたらしく、そのためか、踏力や感触は明らかに一般的なロードカーに近かったが、ストロークの短さとつながりの潔さが、サーキットで多大な効果をもたらした。
60年代の英知を尽くして製作された逸品の1台。
アバルト1000SPの持つ60年代の特徴といえば、丸みを帯びたボディ・スタイリングもそのひとつ。FRP製のバルケッタ・ボディは、60年代のレーシング・スポーツそのものといえる。また、ボディサイドには、リア・マウントラジエータへの大きなエア・インテークがデザインされている。
サスペンションには、当時のレーシングスポーツとしては、極めてオーソドックスなレイアウトが施されていた。フロントにはダブルウィッシュボーン、リアには長いラジアス・ロッドを持つ4リンク。また、前後両輪ともにスタビライザーが装着されている。
コックピットには、必要最小限の計器類とレーシング・パターンでゲート付きのシフト・レバーを装備。タイトな2シーター・スポーツである。
アバルト1000SPのレース・デビューは1966年。活躍の舞台は主にヨーロッパであった。1968年と69年にかけては、タルガ・フローリオなど、多くのレースの1000ccクラスで数々の栄冠に輝いた。
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