ABARTH RECORD MONZA LM /Bialbero

abarth record monza photo

ル・マン24時間レースを戦うために誕生したアバルト・レコルト・モンツァLM。

750ccのエンジンを搭載した四国自動車博物館の1台、シャーシ783512も、750ccバージョン2台と850ccバージョン1台とともに、’61年のル・マンに参戦。 850ccのLMはクラス優勝を果たし、総合14位を達成した。また、この展示車は、’59年のモンツァ12時間レースにゼッケン66で出場。みごと、ポールポジションを獲得した。

ル・マンに挑んだレコルト・モンツァは総生産台数5台。現存するのは推定わずか3台という超レアな車である。

アバルト初のDOHCを搭載したマシン。

アバルトというと、小排気量で高性能なスポーツ・レーシングカーを思い浮かべる。傑作といわれる数多くのマシンは、それぞれが個性的で魅力的であった。
創始者、カルロ・アバルト(1908-1979)という人物は、フェラーリやランボルギーニと並び称されるような、速いクルマをつくることに燃えた情熱家であった。戦後間もなくマフラーの製作で成功をおさめ、その後にスポーツカーの生産に乗り出すこととなる。
アバルトはフィアット製の小型車をベースにマシンを開発していた。エンジンだけを利用したり、ボディもそっくり利用するなどして別物のアバルトスポーツに仕上げるのだ。1950年代後半から生産が軌道に乗り始め、’55年に登場した傑作車、フィアット600から750Zagatoを代表とする幾多のレーシングマシンが誕生した。その中から’58年、レコルト・モンツァと呼ばれる傑作シリーズが発表される。

水冷直列4気筒OHVエンジンをベースに排気量の拡大、シリンダーヘッドのDOHC化、オーバーサイズのキャブレターの装着などのチューンアップを徹底的に施して、1万回転を超える高性能エンジンが誕生。このエンジンを載せたレコードカー(速度記録車)は、イタリアのモンツァで数々のスピード記録を樹立した。
こうして、アバルト初のDOHC搭載マシンが完成。ボディスタイリングは、アルミボディを得意とするカロッツェリア・ザガートが手がけた。レコルト・モンツァの命名は、モンツァ・サーキットで1957年10月にアバルト750レコードカーが世界記録を樹立したことに由来し、1958年以降の新しいシリーズにこの名が与えられた。

四国自動車博物館の1台と同型のLMは存在しない

四国自動車博物館に展示されている1台は、レコルト・モンツァ LMといい、このシリーズの中でもル・マンを戦うために市販車を大きくモディファイしたマシンである。エンジンユニットには、ル・マン仕様特有のチューブラー・フレームにオリジナルのビアルベーロエンジンを搭載。オイル潤滑系の強化や、コンロッドに焼きが入れられるなどのチューンが施されている。エンジンフードを開けると中は複雑に見えるが、それが”サソリ・マジック”の秘密なのかもしれない。
ウィンドウは前後左右ともに面積が狭く、クォーターウィンドウには、ガラスではなくてルーパーの入ったパネルが装着されている。ボディはテールが市販車より丸みを帯びており、リアフードには、パワーパルジが設置されている。フロントラジエーターのため、ノーズは台形のグリルが開口している。現存する他の2台のLMはこの形状が楕円形と聞く。したがって、四国自動車博物館のこのLMは地球上のオンリーワンということになる。

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